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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(れ)1786号 判決 1952年2月14日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鍛冶利一の上告趣意第一点について。

しかし、所論の原審第三、四回各公判調書の各末尾には、裁判所書記官補なる官名の記載と松下武夫の署名捺印が存するから右各公判期日には公判調書の作成者たる松下書記官補が裁判所書記として立会したものであることが公判調書の記載自体でこれを認めることができる。従って所論の各公判手続並びにその調書に所論の違法ありとの主張はあたらない。されば所論の証人の供述を証拠として採用したからといって、原判決を目して適法な裁判所の構成と審判手続に基づかないものとして破棄さるべきである旨の論旨は、その前提を欠き採用するをえない。

同第二点乃至第四点について。

第二点の論旨は判示第一事実の判示金員は判示大田和が判示指導所の所員一同に対してなした社交上の寄附金であって、被告人が同所の所長たる関係上その授受の相手にされたものにすぎない。第三点の論旨は判示第二事実の判示金員は被告人がその職務と関係のない嘱託料として受領したものであり、第四点の論旨は判示第三事実の判示金員は職務に関係のないものであって、俳画と交換に受領したものにすぎない、とそれぞれ主張して原判示事実の誤認を独断し、これを前提とする原審の擬律錯誤を主張するに帰する。しかし、原判示事実の認定はいずれも原判決挙示の各証拠に照してこれを背認するに足り、その間反経験則等の違法もないから、所論法令違反の主張はその前提を欠き採るをえない。

同第五点について。

しかし、共同審理を受けていない単なる共犯者の供述が被告人の供述を補強する証拠としてそれ自身完全な証拠力を有するものであることは論旨に引用する当裁判所の判例(昭和二三年(れ)七七号同二四年五月一八日大法廷判決)の趣旨とするところであるから、原判決は所論のように被告人の自白を唯一の証拠として被告人を有罪としたものとはいえない。されば所論憲法三八条三項違反の主張はその前提を欠くもので、これまた採用するをえない。

よって旧刑訴四四六条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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